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痛みはあったが、掴まれた手を振り払うことなく相手のことを見つめる。
すると、藍忘機の視線が僅かに揺れ動き、言いにくそうに口が開かれた。
「…何故、私を避ける」
「っ…」
藍忘機の口から出た言葉は予想外のものだった。
避けていたのは事実であり、避けられて当然の行動をしたのは彼のはずだ。
それなのに問いかけてきた声は悲痛に満ちており、魏無羨のほうが悪いことをしている気分になってくる。
「……あんなことしておいて…避けるのは当たり前だろ…」
はっきりと伝えるつもりが、言葉は尻すぼみになってしまい、手首を掴まれたまま二人の間に静寂が落ちる。
藍忘機の手から伝わってくる熱に何故かドキドキと心臓の鼓動が早まっていき、魏無羨は耐え切れずに手を振り払おうとしたのだが。
「…身体は大丈夫か」
「えっ…」
まさか身体の心配をされるなんて思ってもみなかった。
確かに無理矢理抱かれた直後は身体中が痛く、もうこんなことしたくないと思った。
しかし、そう思ったのはほんの一瞬だけで、魏無羨はすぐに別の感情のほうが大きくなっていた。
ずくんっ
身体の奥が再び疼く。
あの日以来、この疼きは魏無羨のことを度々襲った。
そして、疼きに耐え切れずに何度か自分で抜いてしまっていたのだ。
抜いた直後は僅かに気が紛れるものの、根本解決しているわけではなく、抜く度に藍忘機のことを思い出してしまっていた。
自分でどうすることもできないのならば解決できるのは今目の前にいる男しかいないのではないだろうか。
視線を彷徨わせたあと、藍忘機の瞳を見つめる。
「魏嬰…?」
「…」
藍忘機に身体が疼いて仕方がないことを伝えるべきだろうか。
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