「……身体がおかしい…」
小さく声を漏らす。
その声は僅かに震えてしまい、情けない気持ちが募る。
「どのように?」
「…奥のほうが、その…疼くというか…」
いざ言葉にすると羞恥心に襲われ、言葉の途中で手を振り払って逃げ出してしまおうかと思ったのだが、魏無羨が動くよりも早く、藍忘機が魏無羨のことを抱きしめてきた。
「ら、藍湛⁉」
「静室に、来てほしい」
「え…」
「嫌か?」
耳元で響く低音に魏無羨は抗うことができなかった。
身体全体が熱くなり、あの日の、蔵書閣でのことが一気に蘇る。
そして、聞こえるか聞こえないかわからないほど小さな声で呟いた。
「嫌、じゃない…」
静室―
藍忘機に促されるまま寝台へと腰かけると、彼も隣へと座った。
灯りもつけず、月明かりだけが室内を照らしている中で、藍忘機の手が魏無羨の腹の上へと伸びる。
衣の上からそっとその場所を撫でられるとぞくぞくとした感覚が奥深くに広がっていく。
「ら、藍湛…なんか、変…」
ただ撫でられているだけなのに、彼の筋張った手が衣の上を滑る度に身体が熱くなっていく気がする。
「何処がおかしい」
彼の声は落ち着いており、数日前の蔵書閣での余裕のない姿とは全く違うことに動揺してしまう。
まさか意識していたのは自分だけなのでは。
そんなことまで頭に浮かんできてしまい、魏無羨はなかなか次の言葉を発することができず、口を噤んだ。
「魏嬰、こちらを見て」
「んっ…」
言われるまま視線を藍忘機のほうへと向けると彼の琥珀色の瞳と絡み合う。
冷静な瞳の奥に熱い炎があるような、そんな情熱的な視線。
この瞳に見つめられ続けたらまずいと思い、視線を逸らそうとしたのだが、腹を撫でていた手が頬に触れ、顔を背けることができなくなってしまった。
そして、彼の綺麗な顔が近付いてくる。
「らん、じゃっ…んっ」
あの時と同じ。
薄い唇が、熱い舌が、熱い呼吸が、魏無羨を包み込む。
絡められる舌に再び腹の奥がずくんっと疼き、布に覆い隠された陰茎もぴくっと反応してしまう。
唾液の交じり合う音が脳内に響き、魏無羨は藍忘機の衣をきゅっと握り締めた。
「んっ…ぁっ…」
心地良い唇が離れていくと薄っすらと開いたお互いの口の隙間からは熱い吐息が零れ落ちる。
口付けだけで脳が蕩けてしまうような感覚に襲われながら藍忘機のことを見つめると、彼は魏無羨とは対照的に至って落ち着いているように見えた。
自分ばかりが余裕を失っていることに魏無羨は軽く頬を膨らませる。
「んっ…なんで、お前はそんな余裕そうなんだよ…」
魏無羨の言葉に藍忘機は薄く微笑みを浮かべた。
そして、魏無羨の膨らんだ頬を再度優しく撫でる。
「余裕ではない。しかし、この前、無理をさせすぎてしまった。魏嬰、もう一度やり直させてほしい」
「…優しくしてくれる?」
「うん」
「…ふふっ、良いよ。ヤろう、藍湛」
一度味わった熱を再び求め合うように二人は口付けを交わした。
縺れ合いながら互いの衣を脱がせ、お互い一糸纏わぬ姿になる。
魏無羨は藍忘機の鍛えられた身体を改めて見て、その腹筋へと指を滑らせた。
その下にはずっしりと重そうな陽物がぶら下がっており、すでに半分ほど勃ち上がっている。
これが自分の中に挿入ったのかと思うと信じられない気持ちが溢れたが、魏無羨はその場所をそっと手で握り込んだ。
「っ…」
藍忘機の口から抑えきれなかった息が零れ落ち、魏無羨は彼の顔を見つめる。
普段の仏頂面とは違い、魏無羨の手から与えられる刺激に耐えている表情はなんともそそるものがある。
ゴクッと息を飲み込んでから手の動きを速めると、藍忘機の口から洩れる息は徐々に増えていき、陽物の硬さも増していった。
先走りの液体が鈴口から溢れ、ぽたっ…と魏無羨の手の上へと落ちる。
「んっ…藍湛、気持ち良い?」
「っ…うんっ」
素直に答える藍忘機の姿に気を良くしていると、藍忘機の手が魏無羨の陽物を包み込んだ。
「ぁ…んっ…」
藍忘機の姿に煽られた魏無羨の陽物は触れられる前から硬さを持っており、数度擦られただけで透明な液体を滲ませた。
互いの陽物を擦り合い、二人の間の呼吸も荒く、熱くなっていく。
「ら、んじゃっ…きもちぃっ…ぁ、んっ…すぐっ、イっちゃいそっ…」
「うんっ、出して」
裏筋をぐりっと親指の腹で擦られた瞬間、魏無羨の全身に電流を流されたような快感が走り抜けた。
「イっ…あぁぁー!」
びゅくびゅくっ
魏無羨の陽物から吐き出された白濁の精液が二人の腹を汚していく。
射精の快感に、藍忘機の陽物を握っていた手に力が入ってしまったが、彼は寸でのところで射精を耐えたようだった。
熱い息が耳元に零され、それすらも快感を引き起こす。
「は、ぁっ…はぁっ…んっ…らん、じゃ…ごめっ…先、イっちゃった…」
「ん…構わない」
「ふっ、ははっ、まだ冷静でいるつもりか?いつまで我慢できるか…んぁっ!」
煽る言葉を続けようとしたのだが、自身の甲高い声によってその言葉は搔き消されてしまった。
それは、魏無羨の射精したものを纏わせた指が後孔をぐいっと押してきたからだ。
滑りを帯びた指は僅かな力のみで孔を拡げ、中へと侵入してくる。
初めてヤったときのような抵抗や痛みはなく、あっという間に指一本を飲み込んでしまったのだが、藍忘機は何やら訝しげに魏無羨の顔を見つめてきた。
「……」
「藍湛…?」
「……私以外に、誰かとこのようなことをしたのか?」
「はぁっ…⁉」
思ってもみなかったことを言われて素っ頓狂な声が出てしまう。
こんなこと他の誰かとできるわけがないだろ!そう口にしようとしたのだが、何故そんなことを藍忘機が言い出したのか一つの考えに辿り着いてしまい、魏無羨は気まずげに視線を泳がせた。
「魏嬰、答えて」
「ぁー…えっと…その…」
言い淀んでいると、ぐりっと内側の一部を強く押し上げられた。
ビクンッと身体が跳ねあがり、快感が脳まで一気に駆け上がる。
「あぁぁっ!」
魏無羨が大きく反応を示した場所、前立腺を何度もぐりぐりと押し上げられ、強すぎる快感に自然と涙が浮かんできてしまう。
「ゃ、あぁっ、そこっ、やぁっ!」
「では、正直に答えて」
ぐりっ、ぐりっ
「言うっ、言うからぁっ!」
その言葉に前立腺を押し上げていた指の動きは緩やかになり、促すようにかりかりと細かな刺激を与えてくる。
「ぅ、ぁ…」
「魏嬰」
「……自分で…触った…」
「え?」
藍忘機の驚きの表情に顔がカーッと熱くなる。
きっと藍忘機は魏無羨の後孔の柔らかさに気付いて疑いの言葉をかけてきたのだろう。
そして、彼の予想は的中しており、魏無羨は身体が疼いて一人で抜くときに、前だけでは物足りず、後ろも弄ってしまっていたのだ。
藍忘機が固まってしまっていることに余計恥ずかしさが増し、それを誤魔化すように魏無羨は自分の唇を藍忘機の唇に押し当てた。
ちゅっと軽い音を鳴らせたあと、藍忘機の耳元へと唇を寄せて囁く。
「お前があんなことしたから……疼くって言っただろ…」
「っ…!」
藍忘機が息を飲む音が聞こえた瞬間、後孔に埋められていた指が一気にずるっと引き抜かれた。
突然の動きに目を丸くしていると、両脚を左右に大きく広げられ、その間には恐ろしいほどに勃ち上がった陽物が存在を主張していた。
「ら、んじゃっ、まって!」
「君が悪いっ」
ずぷっ
「あぁぁーっ!」
魏無羨の制止の声を無視し、藍忘機は先走りで滑りを纏った陽物をずぷぷっと中に押し込んできた。
いくら最近後孔を使って自慰行為をしているといっても大きさが違いすぎる。
みちみちと孔を拡げられていく感覚に上手く呼吸ができなくなり、魏無羨は助けを求めるように藍忘機の両腕をぎゅっと掴んだ。
苦しさに喉を仰け反らせれば、そこにがぶりと噛みつかれて痛みに襲われるが、それと同時に彼の上向きの陽物が前立腺をぐりっと押し上げた。
「ぁっ、やぁっ、ぁぁっ!」
快感によって後孔の締め付けが一瞬弱まったのを見計らい、藍忘機は一気に陽物を押し進め、パンッと音を鳴らせて最奥まで埋め尽くしてくる。
「ぅ…ぁ…やさしくって…言ったぁ…」
「くっ…君が煽るようなことを言うからだ…」
ガクガクと震える太腿で藍忘機の腰を挟み込み、彼の動きを止めようとするものの、そんな弱い抵抗は何の役にも立たない。藍忘機はパンッパンッと何度も強く肌をぶつけてきた。
「ぁ、あっ、ゃ、っ、あぁ、らんじゃっ、ゆっくりがいいっ」
涙でぼやける視界に映る彼に必死に訴えかける。
すると、腰の動きが少し緩まった。
喘ぎ声と泣き声の交じり合った音が口から零れ、それを呑み込むように藍忘機の唇が重ねられる。
「ふっ…ぅ…ふぁっ…んっ…」
もっと、と求めるように腕を彼の首の後ろへと回す。
口付けが深まるのと同時に後孔に入った陽物が最奥をトンッと突き上げた。
そこを突かれるとビクンッと身体が跳ね、魏無羨の反応を楽しむように藍忘機は何度もそこをトンットンッと叩いてきた。
「ぁ、んっ、らん、じゃっ…そこ、やぁ…」
「…ここが疼くのでは?」
「そ、だけど…あぁっ!」
ぐりっと更に強く押され、それ以上奥にはいけないというのに彼はまだ奥に入ろうとしてくる。
「や、ゃだぁ…おく、むりだって…もうはいらないからぁ…」
ふるふると首を振って嫌だと訴える。
すると、藍忘機の手がちょうど彼の陽物の先端があるであろう辺りの腹を撫でてきた。
「魏嬰」
「んっ…?」
ぐっ
「んぇっ⁉」
優しく撫でていた手がその場所を強く押した。
その瞬間、反発するように腹の奥に力が入ってしまった。
ぐぽんっ
「――ッ!!」
腹の奥で奇妙な音が響く。
それ以上奥へはいけないと思っていた場所が強制的に開かれる感覚。
一瞬にして頭の中が真っ白になり、身体がガクガクと震える。
口をただはくはくと動かして取り込めない酸素を必死に取り込もうとしていると、藍忘機はその場所をぐぽっぐぽっと何度も突いてきた。
「ゃあぁぁっ!らめっ、あぁっ、やらぁっ、あぁぁっ!」
ばちゅっんっ
ぐぽっ
「ぁあぁっ、こわれっ、りゅっ、ゃあぁっ」
「うぇいっ、いんっ」
ばちゅっと大きく一突きされた瞬間、魏無羨の目の前がチカチカと激しく明滅した。
「あぁぁぁっー!」
ビクビクと身体が痙攣し、絶頂の波に襲われる。
ぎゅうぎゅうと中に埋まる陽物を締め付けていると腹の奥深くに熱い飛沫が叩きつけられるのを感じた。
藍忘機の腰がブルッと震えた感覚に、中に彼のモノを出されたことを悟る。
「はぁっ、は、ぁっ…ぁ…んっ…」
「魏嬰…」
絶頂の余韻に浸りながら涙で歪んだ視界の中で藍忘機のほうを見ると彼は心配そうな表情を浮かべていた。
その顔に何故か笑いが込み上げていてしまう。
「ふっ…ははっ…優しくって言ったのに…」
「…すまない」
「……質問にちゃんと答えてくれたら許してあげる」
「うん」
眉尻を下げた藍忘機の顔へと右手を滑らせ、その白い頬を撫でる。
そして、月明かりの下でも薄っすらと赤く色付いた耳朶へと唇を寄せた。
「こういうことするの好き?」
「……うん」
「俺とするのが好き?」
「…うん」
「またヤりたい?」
「うん」
「ふふっ、素直でよろしい。じゃあ…」
「素直な藍湛にはご褒美をあげる」
―素直END―