ハッと昨日の出来事を思い出す。
触手を追い払う時に一瞬感じた温かな気。
あれは触手を追い払うためのものではなく、何か別の意味があったのでは。
魏無羨を追い立てる紋のようなものを付けられていたとしたら…。
そうとなればこの異変を取り除けるのはあの場にいた藍忘機しかいない。
「くっ……」
魏無羨は奥歯を噛み締めながらガクガクと震える両足をなんとか立ち上がらせ、雲深不知処へと向かうことにした。
「は、ぁっ…はぁ…っ…んぁっ…」
人目につかないよう、森の中を歩いていた魏無羨だったが、時間が経てば経つほどに尿道からの刺激は強さを増していた。
立っていることもままなくなり、近くの木へと寄りかかる。
少し休憩したら落ち着くかもしれない。
その願いを込めて、深く息を吐く。
ガサッ
「っ…!」
何者かが草を踏む音にビクンッと身体が飛び跳ねる。
ガサガサという音は次第に大きくなり、こちらに近づいてくる気配に魏無羨の心臓はバクバクと煩いほどに鼓動を早めていく。
ガサッ
「魏嬰?」
「らっ…含光君っ」
そこに現れたのは真っ白い衣に身を包んだ藍忘機だった。
まさかこんな所に藍忘機が現れるとは予想もしていなかったが、雲深不知処に行くまでもなく、向こうから現れるとは好都合だ。
魏無羨は呼吸の乱れに気付かれないように一つ息を吐き出し、藍忘機のことをキッと睨みつける。
「藍忘機、お前、俺の身体に何かしただろ」
「何か、とは?」
「しらばっくれるな…昨日、あの触手を追っ払う時に変なもん付けたんじゃないのか」
「……」
魏無羨の言葉に藍忘機の視線がスッと股間の辺りへと移った。
その視線で確証した。
やはり、彼は魏無羨の陰茎に何かを施したのだ。
「っ…消せよっ…」
ビリッ
「ひぅっ⁉︎」
突然の鋭い刺激にビクッと身体が跳ね、声が上がってしまう。
木に背中を預けていなければそのまま崩れ落ちてしまうところだった。
衣の胸元をギュッと握り締め、再度藍忘機のことを睨みつける。
「おいっ!含光君!話の途中だっただろっ…って、ひっ…あっ…やめっ、あぁっ!」
怒鳴り声を上げるが、それはまたしても自身の嬌声によって掻き消されてしまった。
ビリビリとした刺激は陰茎を勃起させるだけでなく、腹の方にまで刺激を与え、尿意を引き起こしてくる。
こんなところで漏らすわけにはいかないと、魏無羨は足を内股にしてなんとか耐えようと震える足に力を込めた。
「がん、こうっ、くんっ…本当に、やめっ…漏れそっ、だからっ…」
「ここですれば良い」
「はぁっ⁉︎なに、言ってっ⁉︎」
あの品行方正、清廉潔白な藍忘機がここで漏らせば良いだなんて、誰がそんなことを言う彼を想像しただろうか。
あまりの信じられない出来事に唖然としていると藍忘機が魏無羨の腰を掴んできた。
そして木に背中を預けていた身体をくるりと反転させられ、あろうことか衣の上から魏無羨の陰茎を握り込んだ。
「ひっ⁉︎」
ギリギリのところで耐えているその部分を突然握り込まれ、危うく出してしまうところだった。
そんな魏無羨の状況などお構いなしに藍忘機は勃起した陰茎を上下に擦り上げてくる。
「ゃ、あっ、やめっ、はなせっ…!」
本当に不味い。
なんとしてもここから逃げ出さなければ。
魏無羨は渾身の力を振り絞って身体を捻り、抵抗しようとしたのだが。
「ひっ、あぁっ!」
ビリッと尿道に刺激が走り、抵抗しようとした腕が落ちてしまい、その腕を藍忘機に掴まれて背後で一纏めにされてしまった。
それに加え、何か紐のようなもので手首を縛られ、抜け出すことができなくなってしまう。
「なにっ、して…っ!」
下肢にひやりとした外気が触れる。
抵抗する間もなく晒されてしまった臀部に藍忘機が触れてきた。
その指は昨日触手によって犯された後孔へと伸び、ぐっとそこを押してくる。
「や、めっ…!」
ぐちゅっ…
「あぁっ…!」
一本の指がぐちゅりと狭い後孔の中へと入ってくる。
勝手に濡れるはずのないそこに指が押し込まれると中から粘着質な水音が響いた。
昨日の触手によって出された粘液が残っていたのかもしれない。
痛みをそれほど感じなかったのは良かったが、その滑りのせいで藍忘機の指を抵抗なく飲み込んでしまい、ぎゅうぎゅうと締め付けてみるが彼の指は更に奥へと入ってきてしまう。
そして、腹側のある一点をグッと指先で押してきた。
「ゃ、あぁっ!そこ、だめっ、あっ、ぁあっ、ゃだぁっ…!」
前立腺をぐりぐりと押され、先走りの液体がダラダラと落ちていく。
尿意と射精感の両方に襲われ、魏無羨の瞳からはぽろぽろと涙が溢れ落ち、せめてもの抵抗だとふるふると首を横に振ることしかできなかった。
暫くの間、前立腺を攻め立てられていたが、突然ずるっとその指が抜かれた。
そして耳元で藍忘機の声が囁いてくる。
「魏嬰、昨日の触手は気持ち良かった?」
「ふぇ…?」
突然予想外の質問をされ、呆けた声が出てしまう。
そんな質問して何の意味があるんだ。
確かにあの触手によってイってしまったが、あれは強制的にイかされたようなもので、決して気持ち良かったわけでは…。
ぐるぐると昨日のことを考え、魏無羨が返答できずにいるとビリッと尿道内に刺激が走り、ビクンッと身体が跳ね上がる。
「魏嬰、答えて」
「き、気持ち良かったわけないだろ…!」
「しかし君は達していた」
「…あれは…イきたくてイったわけじゃ…」
快感を得なければイけないはず。
藍忘機にその事実を突きつけられ、言葉に詰まってしまう。
何と答えれば良いのか考えながら俯いていると後孔にぴとりと何かが触れた。
それは指なんかじゃない。もっと太いもの。
ビクッとして恐る恐る後ろへチラリと視線を向けると至近距離にいた藍忘機の琥珀色の瞳と目が合った。
その瞳は怒りを含んでいるように見え、ヒクッと身体が震える。
そして、薄い唇が告げてきた。
「魏嬰、あんなもので犯された君の身体には罰が必要だ」
ぐちゅっ
「ゃっ、あぁぁっ!」
指なんかとは比べ物にならない剛直が後孔を割り開いてくる。
張り上がった亀頭が孔の縁を拡げ、狭い中を無理矢理突き進み、ごりごりと腸壁を擦ってきた。
そのあまりの大きさに呼吸ができなくなり、口をはくはくと動かしていると、パンッと肌と肌がぶつかる音が響く。
奥まで貫かれ、そこで動きが止まる。
魏無羨は息も絶え絶えになりながらなんとか言葉を紡いだ。
「っ、はっ…ぁっ…ゃ……ぬ、いてっ…」
弱々しい声で訴えると腰を両手で掴まれ、ずりゅっと陰茎が引き抜かれていく。
願いを聞いてくれたのか、と一瞬思ったが、その剛直は完全に抜け切る前に再び最奥を穿ってきた。
「あぁぁっ!なん、れっ、ゃああっ」
パンッパンッ
肌のぶつかり合う音が響き渡り、ガクガクと腰が揺さぶられる。
後ろ手に縛られ、不安定な姿勢は今にも崩れ落ちてしまいそうだったが、藍忘機の手に支えられた身体は崩れ落ちることを許してくれなかった。
後孔を犯されているだけでも限界を迎えそうだったのだが、そこにビリビリッと尿道への刺激も追加され、魏無羨は大きく目を見開く。
「やっ、あぁっ、それっ、らめっ、でちゃっ、あぁっ!」
尿なのか精液なのか分からなかったが、刺激を与えられた身体はびくびくと震え、限界を訴えていた。
「魏嬰、出して」
腰を掴んでいた右手が腹へと移動し、そこをぐっと押してくる。
その瞬間。
「ひっ、あぁぁっ!」
プシャァァッ
我慢し続けていた尿がビシャビシャと地面に撒き散らされる。
尿特有の匂いが漂い、こんな状態で漏らしてしまったことに頭が真っ白になる。
そのまま意識を飛ばしてしまいたいくらいだったが、それは許さないとばかりに後ろから突き上げられ、尿道からも刺激を強められ、今度は尿とは別のものが迫り上がってきた。
「ゃ、やぁっ!も、やらぁっ!」
「出して」
パンッ パンッ
ビリビリッ
「あっ、あぁぁっ!」
ぐりゅっと最奥を抉られ、魏無羨は甲高い声を上げならが耐えきれずにビシャッと精液を飛ばしてしまった。
「や、あぁっ、イって、イってぅ、とまっ、ゃあぁっ!」
射精して絶頂に包まれた身体を藍忘機は構わずごちゅごちゅと突き上げてくる。
激しい突き上げに身体が揺さぶられ、精液が出なくなった後も快感を得る場所を突かれれば常にイきっぱなしになっているような錯覚に陥り、魏無羨の瞳からはぼろぼろと涙が零れ落ちた。
「や、ぁっ、びりびりっ、しちゃ、やぁっ、また、でちゃっ、あぁっ」
尿道からの刺激にまた尿意のようなものを感じる。
先程漏らしてしまったのだからもう出ないはずだ。
それなのにそれは再び内側から湧き上がってきている。
「魏嬰、もっと出して」
ごちゅっ
「ぁっ、ぁあああっ!」
再び最奥を叩かれた瞬間、プシャッと透明な液体を吐き出してしまった。
尿のようにサラサラとしていたが、尿のような匂いはしない。
その液体は突き上げられる度にプシャップシャッと吐き出され、射精よりも強い絶頂感を与えてくる。
「ぁあっ、ゃらぁっ、とまっ、てぇっ、あぁぁっ!」
止まるどころかどちゅどちゅと突き上げる速度を早められ、手形が残ってしまうのではないかと思うほど強く腰を掴まれる。
内壁を痛いほどに擦り上げられ続け、慎ましく閉じていた蕾は今は見る影もないほどに拡げられ赤くなっていた。
そして、背後から獣のような荒々しい呼吸が告げてくる。
「魏嬰っ、出すっ」
「や、あぁっ!だめぇっ!」
「くっ…」
どちゅっ
大きく最奥を穿った腰が止まり、どくどくと体内に熱い精液が大量に叩きつけられる。
「は、ぁっ、なかっ、やぁ…んぅっ⁉︎」
中に出されたという事実に瞼を伏せて涙を流していると、突然ぐいっと身体が引っ張られた。
そして、次に訪れたのは唇への柔らかい感触。
半開きになっていた唇の隙間から熱い舌が口内へと入ってくる。
噛みついてやりたい。
一瞬脳裏にそんなことが過ぎったが、絡められた舌が気持ち良く感じてしまい、自らもその舌を絡めてしまった。
「んっ…ちゅっ…は、ぁ…っ…んぅ…」
唾液の絡み合う音と唇の隙間から溢れる熱い息に次第に脳がぼんやりとしてくる。
ふわふわとした心地に酔いしれていると唇がゆっくりと離れていき、じっと瞳を見つめられた。
「は、ぅ…らん、じゃ…んっ」
名前を呼ぶとちゅっと再び軽い口付けをされ、思わずきゅっと目を瞑ってしまう。
ゆっくりと瞼を開けるとすぐにでも触れ合ってしまいそうな距離に藍忘機の顔があり、ドキッと心臓が跳ねる。
「魏嬰、触手と私どっちの方が良かった?」
「へ……?」
予想外の質問にぽかんと口を開けてしまう。
まさか藍忘機は魏無羨が触手に犯されたことに嫉妬してこんなことをしたのか…?
昨日は平然な顔をしながら触手を退治していたように見えたが、その実、腹の中で触手に対する怒りで燃えていたとしたら…。
そう思ったら笑いが込み上げてきてしまい、思わず噴き出してしまった。
「ぷっ…はははっ、藍湛、触手に嫉妬したのか?」
「……」
返事をしないところを見ると図星のようだ。
好き勝手犯されたのは自分の方だが、少し眉尻を下げた藍忘機の顔を見ていると怒りよりも彼を揶揄いたい気持ちの方がむくむくと大きくなっていく。
「ふふっ、どっちだと思う?」
「…っ」
藍忘機の琥珀色の瞳がぐらっと揺れたような気がして、魏無羨はニッと口角を上げた。
そして、ちゅっと藍忘機の唇へ自身の唇を重ねる。
「藍湛の方が良かったよ、けどあんな激しくやられて変な癖でもついたらどうしてくれるんだ…あぁっ⁉︎」
ぐちゅっと後孔内に挿ったままだった陰茎が奥を突いてきて魏無羨のこめかみを冷や汗が垂れ落ちる。
「ら、藍湛…?もうやらないよな…?」
「変な癖がついたのなら私が相手しよう」
「まっ、まてまて!俺もう限界っ…あぁっ!」
魏無羨に藍忘機を止めることなどできず、結局その後も意識を飛ばすまで抱かれてしまったのだった。
「魏嬰、私以外を挿れないで」
― 嫉妬END ―